「そのお守りで十分だって。私、不器用だもん。陽菜みたいに上手く作れないよ」


「藍沢たちがくれたのとは別に欲しい。下手でもいいから桜子のがいい」


真っ直ぐな瞳で見つめられ、くすぐったい気持ちに駆られる。


母性本能というか…なんというか。


そんな懇願するような目で見られたら、断れない。


「試合までもう時間ないから、クオリティは本当に低いよ?それでいいの?」


「うん。桜子が作ってくれるんならなんでもいい」


なんか…勘違いしちゃいそうだ。


私は特別な存在なんじゃないかって。


「お裁縫、頑張るね」


「おう!」


碧は、とたんにご機嫌になって、鼻歌を歌い出した。


…碧が私を必要としてくれた。


私のお守りが欲しいと言ってくれた。


なんて幸せなことなんだろう。


いつまでもこの幸せが続いてほしい。


そう、願わざるを得なかった。