「碧!ちょっといい?」


喧騒の中、桜子の澄んだ声が聞こえてきた。


いつもはこんな輪に近づこうともしないのに。


「どうかした?」


「ちょっと話が…」


強引に廊下に連れ出され、人気の少ない渡り廊下まで移動させられる。


「……なに?」


マネージャーのことは一旦忘れろ…。


さっきから頭がそれでいっぱいだ。


これじゃ、フラットに桜子と話せない。


「……あのさ…」


桜子は俯きながら、か細い声を絞り出す。


「その……オギと…何かあったの?」


「……え?」


桜子もその話かよ。


モジモジして言いづらそうだった分、しょうもない話で拍子抜けする。


「別に、何もないけど?」


桜子のことで口論になったとは言えない。