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翌日の昼休み。


私と陽菜は、密談に最適な屋上に来ていた。


6月に入り、蒸し暑いこの季節にわざわざ屋上でご飯を食べる猛者はいない。


空のように青いベンチに並んで座り、景色を見下ろす。


藤北からの眺めはさほど綺麗じゃない。


住宅街が広がっているだけの煩雑な景色だ。


「星矢がどうとかは一旦置いといて、桜はどうしたいの?」


お弁当を広げるよりも早く、陽菜は口を開いた。


「…どうって……」


「本心で答えて。桜はいつも自分を犠牲にしすぎなの。せめて私には本心を教えてよ」


じゃないと寂しいじゃん?と陽菜は微笑んだ。


「…本心で言うと、私はマネに戻りたい」


定期戦を見てから、その気持ちに火がついてしまった。