『“桜子”は俺だけの呼び方だからダメだ』


ぶっきらぼうにそう言い捨てて、碧はどこかに去っていった。


今思い返せば、瑠璃の目の色がその時一瞬変わっていたような気がする。


その当時の私は全く気づかなかったけど。


『じゃあ普段は何て呼ばれてるの?』


『“桜”が多いかな。だから桜って呼んでほしいな』


『わかった!よろしくね、桜』


まだ葉桜が残る4月下旬の出来事だった。


それから私と瑠璃は急速に仲良くなった。


もう一人のマネの陽菜はこの頃、瑠璃を避けていて、瑠璃が私にベッタリだったこともあり、あまり仲良くなれなかった。


瑠璃とは休日に一緒に出掛けたこともあった。


出掛けたときや、休憩時間にする話は基本的に碧のこと。