不本意ながら、新しい習慣が形作られ、そこに嵌めこまれてゆく。

こちらの時間割を把握した彼は、週に二回くらいの頻度で、放課後現れるようになった。

曇りガラス越しにも、廊下にたたずむシルエットだけで “彼” だとはっきり分かるのはなぜなのか。
陽澄だけでなく、他の誰もがすぐにそれと察し、そのときだけこちらに視線が寄せられるのだ。

(早く行きなよ) と。

洸暉は放課後迎えに、というか連行しにくるだけではなかった。たまに、朝ふらりとこちらの自宅に立ち寄るようになったのには、閉口した。
なんでだ、と思いながら彼と朝の食卓を囲む。

どこにでも侵入してくるやつだ。自宅にも、身体の中にさえ。

そしてあらためて痛感したのは、祖母はむろん、あれほど故郷を忌み嫌っていた母も、骨の髄まで志深の人だということだった。

佐澤の息子さんに、味噌の香りが飛んだ煮返しのおみおつけなど出せない、と祖母は夕飯の残りを朝に回すのをやめた。

母は母で、パート先のスーパーでお(かず)に良さそうな干物や粕漬けを見つくろっては、冷蔵庫に常備している。