ベッドでも、洸暉の指は確かめるように短くなった陽澄の髪を梳きあげた。
どこか未練がましくさえある手つきだ。
ぱらぱらと指からこぼれた髪が、枕に落ちる。

長い髪が好きなのか、それとも掴める長さが好きなのか…
すぐに考える余裕はなくなった。

きっつ、力抜けって、

その最中、初めて要求めいたことをつぶやかれたが、できるか、と心のなかでだけ(うめ)く。

それでも少しは慣れた、いや、慣れるしかないのだ。
帰りには自転車の荷台に乗れるようにもなった。
歩いて帰るよりずっと早いし楽なので、そこは割りきって送られることにした。

人とモノの境界線に追いやられ、立たされている感覚だ。

望まない行為を強要してくるが、送り迎えはまめだ。
それを優しさなどとは呼びたくない。

なぜときに、自転車の後ろに乗るこちらの手をつかんで、彼の腰に引き寄せようとするのか。

そのたびに陽澄は、荷台をつかむ手に力をこめてそれを拒む。
これ以上、洸暉に自分の体を預けたくはない。