「え、いいよ」と遠慮が先に立つ。
夫に先立たれ、倹しい年金暮らしの家に、娘が孫娘を連れて出戻ってくるとは、迷惑と困惑でしかないだろうに。
「これくらい貰っときなさい。ふだんお小遣いも渡せないんだから」
そう言われるとその通りではあるので、ありがとうと受け取った。
軍資金を手にしてちょっとばかり気が大きくなり、翌日目星をつけていた美容院に予約の電話を入れた。
駅の近くで見かけた店で、陽澄が知るいわゆる美容院のイメージに当てはまったので、携帯に電話番号を入力しておいた。
日当たりが良くガラス張りで、明るく清潔な店内で若い美容師が忙しげに立ち働いている、そんな店だ。田舎っぽくないところがいい。
緊張しながら、女性のスタイリストさんでお願いします、と伝えた。男性には、もうこれ以上触れられたくないのだ。
希望はすんなり叶えられ、土曜日に店に足を運ぶと、シャンプーもカットも無事に女性に担当してもらえた。
「じゃあ、いっちゃいますよー」と美容師の明るい声とともに、大胆にハサミが入る。
背の中ほどまで伸びた髪を、ばっさりとあごくらいの長さのボブにカットしてもらう。
夫に先立たれ、倹しい年金暮らしの家に、娘が孫娘を連れて出戻ってくるとは、迷惑と困惑でしかないだろうに。
「これくらい貰っときなさい。ふだんお小遣いも渡せないんだから」
そう言われるとその通りではあるので、ありがとうと受け取った。
軍資金を手にしてちょっとばかり気が大きくなり、翌日目星をつけていた美容院に予約の電話を入れた。
駅の近くで見かけた店で、陽澄が知るいわゆる美容院のイメージに当てはまったので、携帯に電話番号を入力しておいた。
日当たりが良くガラス張りで、明るく清潔な店内で若い美容師が忙しげに立ち働いている、そんな店だ。田舎っぽくないところがいい。
緊張しながら、女性のスタイリストさんでお願いします、と伝えた。男性には、もうこれ以上触れられたくないのだ。
希望はすんなり叶えられ、土曜日に店に足を運ぶと、シャンプーもカットも無事に女性に担当してもらえた。
「じゃあ、いっちゃいますよー」と美容師の明るい声とともに、大胆にハサミが入る。
背の中ほどまで伸びた髪を、ばっさりとあごくらいの長さのボブにカットしてもらう。



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)