せめて泣くまい、と思う。
シーツを引っ掻いて、きつく握りしめる。
佐澤洸暉の態度は、この場合適切な表現か不明だけど、どこか優しかった。
いや、優しいならそもそもこんな行為を強いたりはしないわけだから、やはり違うか。
なんというか、こちらに気を配っている様子だ。
頭の下に枕をあてがって位置を整えたり、痛みと圧迫感に苦しむ陽澄の頬に、なだめるように手を添えたりと、世話を焼いてみせる。
彼の舌先がにじむ涙を掬いとる。
泣かずにいられる日がくるんだろうか。
ヒズミ、と彼が吐息とともに自分の名を口にした。
シーツを引っ掻いて、きつく握りしめる。
佐澤洸暉の態度は、この場合適切な表現か不明だけど、どこか優しかった。
いや、優しいならそもそもこんな行為を強いたりはしないわけだから、やはり違うか。
なんというか、こちらに気を配っている様子だ。
頭の下に枕をあてがって位置を整えたり、痛みと圧迫感に苦しむ陽澄の頬に、なだめるように手を添えたりと、世話を焼いてみせる。
彼の舌先がにじむ涙を掬いとる。
泣かずにいられる日がくるんだろうか。
ヒズミ、と彼が吐息とともに自分の名を口にした。



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)