せめて泣くまい、と思う。
シーツを引っ掻いて、きつく握りしめる。

佐澤洸暉の態度は、この場合適切な表現か不明だけど、どこか優しかった。
いや、優しいならそもそもこんな行為を強いたりはしないわけだから、やはり違うか。
なんというか、こちらに気を配っている様子だ。

頭の下に枕をあてがって位置を整えたり、痛みと圧迫感に苦しむ陽澄の頬に、なだめるように手を添えたりと、世話を焼いてみせる。

彼の舌先がにじむ涙を(すく)いとる。
泣かずにいられる日がくるんだろうか。

ヒズミ、と彼が吐息とともに自分の名を口にした。