互いに一言も口をきかないまま、彼は家の前までついてきた。
路地に古い木造モルタル造りの家が肩を寄せ合うように並んでいる。その一つが須田家だ。
祖父が購入し、母が育ち、祖父が亡くなり、そして母が陽澄を連れて出戻ることになった家。
ここに至っても、彼が踵を返す気配はない。
どこまで付きまとってくれば気が済むんだ。
げんなりしながら、鞄から鍵を取り出して玄関のドアを開けた。チャイムを鳴らしたくなかったから。
なんということか、陽澄の後ろにくっつくように佐澤洸暉も須田家に足を踏み入れてきた。
「陽澄?」
物音に、台所から母親が顔をのぞかせた。
泣き腫らした顔をうつむかせる娘と、見知らぬ少年の姿を見とめて、絶句して立ち尽くす。
「佐澤洸暉です。遅くまですみません」
全くすまないと思ってなさそうな口調で彼が口にする。
母が小さく息を飲むのが分かった。
「佐澤の、息子さん…?」
路地に古い木造モルタル造りの家が肩を寄せ合うように並んでいる。その一つが須田家だ。
祖父が購入し、母が育ち、祖父が亡くなり、そして母が陽澄を連れて出戻ることになった家。
ここに至っても、彼が踵を返す気配はない。
どこまで付きまとってくれば気が済むんだ。
げんなりしながら、鞄から鍵を取り出して玄関のドアを開けた。チャイムを鳴らしたくなかったから。
なんということか、陽澄の後ろにくっつくように佐澤洸暉も須田家に足を踏み入れてきた。
「陽澄?」
物音に、台所から母親が顔をのぞかせた。
泣き腫らした顔をうつむかせる娘と、見知らぬ少年の姿を見とめて、絶句して立ち尽くす。
「佐澤洸暉です。遅くまですみません」
全くすまないと思ってなさそうな口調で彼が口にする。
母が小さく息を飲むのが分かった。
「佐澤の、息子さん…?」



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)