信じられない、信じたくない。
だが間断なく身体をさいなむ痛みが、逃れようのない現実だと告げている。

陽澄の家は旧地区と呼ばれる場所にある。
同級生の多くは、新地区と呼ばれる、市が地元に住み着く若い家族をターゲットに開発した新しい住宅地に住んでいる。ちなみに市が買い上げる前の住宅地の地主は佐澤家だそうだ。

ショッピングモールが併設され、駅からのバスの本数も多く、それなりに活気があるようだ。
それに対し、古くからの住人がしがみつくように暮らしている旧地区は、高齢化と過疎化が進む一方だ。

ちなみに佐澤のお屋敷は、かつて大名屋敷があったという町外れに位置しているはずだ。

駅に近づくと、少しばかり人と車の流れが増えてきた。ようやく見覚えのある地点まで来たことに気づくとわずかに足に力が戻った。

「もう道分かるから」
そう彼に告げたが、引き返す気配はなかった。

今度は佐澤洸暉が陽澄についてくるかたちになった。
ついてこないでよ、と言ったところで無駄だろうとあきらめて家を目指した。
言って聞くような相手なら、そもそもこんな目には遭っていない。振り切るような脚力もない。