———結局のところ、陽澄は新しい高校で、所属グループどころか、友達一人作ることもできなかった。

佐澤洸暉が陽澄の人生に介入、もとい侵入してきたからだ。

いつからその気配が忍び寄っていたのかは不明だ。目の前のことに必死で、背後をかまう余裕なんてなかったから。
ともかく気づいたのは、図書館だった。

転校してきて、二週目だったか三週目だったか、陽澄は放課後ひとり学内の図書室に立ち寄った。
なぜ図書館かといえば、本屋で雑誌やマンガを買う余裕がないからで。

おまけに今の家は、インターネット回線さえ引いていない。母親もさすがに不便がっているけど、無い袖は振れないのだ。

夜の時間を持て余しがちだからして、時間を潰せそうな読み物が見つかれば…という感じだった。
図書室に来たのは、転校当初、学内を案内してもらったとき以来だ。いくつかのコーナーに分かれ、書架が並んでいる。

人の姿はあまりなく、古い書籍のこもったような匂いがする、静かで安らぎをおぼえる空間だった。