なぜだろう、木の根を見つめて足が止まってしまった。

痛みを感じているのだろうか、それとももはやなんの違和感もなく自己の一部になっているのか。
木に聞けたらいいのだが。

かるく頭を振って視線をはがす。
と、一台の車が交叉点に徐行で向かってくるのが目に入った。

彼だ———と直感する。

なぜ分かるのか、逆光でフロントガラスごしに見えるのは運転席のシルエットくらいなのに。

ああそうだ、曇りガラスごしの廊下にたたずむ人影を、見誤ったことなどなかった。
そして洸暉はいつだって、正確に自分の居場所を探り当てては現れるのだ。

滑るように走ってくる車が陽澄の前で静かに止まる———



【了】