どこまで行くつもりなのか、もう池の縁はとうに遠ざかった。

今、足の下にある(たぶん厚み数センチの)氷が割れたら、体を支えるものは何もない。
掴めるものは、お互いの手だけだ。

もしかして、このまま向こう側まで渡るつもりなのかとも思ったが、彼は足を止めた。目測で、ちょうど池の真ん中くらいの、つまりいちばん地面から遠い地点だ。

率直に、怖いと目で訴える。
声を発することさえ躊躇してしまう。その振動が氷に伝わってしまう気がして。

足の下には確かな冷たい、死がある。見下ろせば、氷を透かして昏く深い場所が、今にも口を開けそうだ。
怖くないのか、と再度洸暉を見上げる。
死んでもいいと、彼は本気でそんなことを思っているのか。

「好きって言えよ」