篤さんは手土産に有名な和菓子屋のお菓子を持って来ていたが、
テーブルに出されたのは、兄の手作りのティラミス。




「甘さ控えめにしてるんで。
甘い物が嫌いな篤さんでも大丈夫なように」


兄はそう言って、篤さんの前にそのお皿を置いていた。


「ああ。サンキュー」


篤さんはどこか落ち着かないように、
視線を目の前に座る私の両親に向けている。


「梢から、大体の事は聞いてる。
梢と篤君が付き合っていたのもそうだけど、
同じ会社なのも色々とビックリとした」


その母親の言葉に、
篤さんは相変わらず緊張したように頷いていた。


夕べ、篤さんとの結婚や妊娠を両親に報告した際に、
篤さんがベリトイの御曹司で、現在そちらの父親の籍に入っている話もした。


そして、一つだけ、両親には嘘を付いた。


篤さんと付き合っていると。


流石に、ワンナイトラブの末の妊娠からの結婚だとは、両親に言えない。


「結婚と妊娠、順番が逆になってすみません。
後、こちらの都合で式も出来なくて」


そう言って、篤さんは頭を下げていて。



「いえ。
梢が幸せなら、僕達はそれで構わないので。
それに最近は、結婚式をしないのも珍しくないみたいだし」


その義父の言葉に、母親も頷いていて。


兄を見ると、ソファーから立ち上がりキッチンの方へと行った。



沸かしていたお湯が沸いて、コーヒーでも淹れるのだろう。


それを運ぶのを手伝うつもりで、
私はそんな兄の後を追う。