その送って貰う道中の、車内で。
「結婚指輪は当然だとして、
婚約指輪はいるか?
普通そういうのは、プロポーズの時差し出す物なんだろうが、もうプロポーズしちまったし」
そう訊かれ、考えてみる。
婚約指輪かぁ。
結婚指輪があるなら、特に欲しいとも思わない。
「いらないです。
そんなにアクセサリーとかも興味ないので」
イヤリングやネックレスは、休みの日とか、遊びに行く時は付けたりするけど。
「じゃあ、婚約指輪の代わりに腕時計でいいか?」
腕時計?
「お前時計してねぇし。
俺もずっと使ってたのが壊れて、
新しいの買おうと思ってたから」
そう言えば、篤さんはずっと黒のG-SHOCKを付けていた。
言われてみると、今そのG-SHOCKは付けていない。
G-SHOCKが壊れるって、一体どんな使い方をしたのだろうか?
「腕時計は、嫌か?」
「それって、篤さんと私、お揃いの腕時計って事?」
「ああ」
篤さんと、お揃いの腕時計。
それって、凄くいい!
「時計でお願いします」
「じゃあ、今から結婚指輪と時計見に行くか?」
「はい」
私がそう返事すると、
私の家へと向かっていたそのボルボは、
車線変更して、逆の方向へと走り出す。



