「篤さんは、私の今お腹に居る子と、自分自身を重ねました?
だから、好きでもない私と結婚しようと…」
「どういう意味だ?」
そう訊く篤さんは、本気で不機嫌というか、怒っているのが分かる。
だから、その意味を私に訊く迄もなく、
分かっている。
「ちょっと状況は違うんでしょうけど、
篤さんのお母さんとお父さんは結婚してなくて。
だけど、篤さんは産まれていて。
だから、この子もそんな風にさせたら可哀想だって」
自分のお腹に手を当てるけど、
本当に居るのだろうか?と思う程、
それはペタンコで。
「お前の言うように、あんのかもな。
だから、堕ろすのはナシだって初めに思った」
堕ろす…。
そっか。そう言う選択も有ったのか。
なんとなく、篤さんがそんな事を言う事が想像付かなかったからか、
私もそれは考え無かったな。
「俺、特に猫が好きとか無かった」
猫?
そう思う私を気にせず、篤さんは花子の頭を、強くガシガシと撫でている。
「こいつを初め見た時も、こんな道端でふらふら歩いて車通るし危ねぇだろ、って感じでただ連れ帰って。
初めは、どうしようか、ってくらいにしかこいつの事を思ってなかったんだけど」
今は、その花子が可愛くて大切で仕方ないのだと、
篤さんを見ていて分かる。
「だから、お前の事も、その腹の子供の事も」
その篤さんの言いたい事は、分かる。
「お腹の子供の事は、篤さんきっととても可愛がるし、大切になると思います。
でも、私の事は…」
そりゃあ、一緒に居たら情が湧いたりはあるとは思う。
でも、そんな情だけで上手く行かないのが、男と女なのだと思う。
「この1ヶ月、会社でお前を見掛ける度、気になってた。
子供の事がなきゃあ、二度とお前に関わるつもりは無かったけど」
それって、そう言う意味?
「全く、好きでもない女と結婚するわけではねぇって事だ」
そう言う意味なんだ。
喜んで、いいのだろうか?



