ケイさんは、大丈夫?と何度も私に気を遣い声を掛けながら、その場所へと案内してくれる。


この人の好意に甘えていいのかな?と思うけど、
もうそんな事がどうでもよくなるくらいに、
気分が悪くなって来た。


お酒を飲まなくて良かった、と本当に思う。



その仮眠室は、ベッドの他にもテレビや小さな冷蔵庫がある。


ベッドも、全部で三つある。


そのベッドの一つに、私は寝かされた。



「今夜、この部屋に誰も来ないように、うちの店の奴には言っておくから。
行きたくなったらトイレとか勝手に行って。
始発の時間迄は、俺も店に居るから、何かあったら誰かに頼んで呼んで」


そう言って、ケイさんはこの部屋から出て行こうとしている。



「あの、ミヤコは…」


「友達?
大丈夫。もう一回あのテーブル戻って、あの子の事はちゃんとタクシー乗せて、帰らせるから」


「そうですか…」


なんとなく、ケイさんは私が危惧している事を分かってくれている。


あの若いホストにミヤコがハマって、このままズルズルとヤバい方向に行ったらどうしようかと。


そりゃあ、ミヤコももういい大人なので、
そうなっても、本人の勝手だし、本人の責任だけど。



「ケイさん。ありがとうございます」


この人は、いい人だ。



「君達が篤の会社の子だからね。
もし、またこの店に来たら、遠慮しないけど」


そう笑うケイさんは、少し怖かった。


暗に、二度とこの店に来るなと言われているのだろうか。


私もミヤコも、次にこの店に来たら、
遠慮なくお客として、お金を巻き上げる、と。