「もっと梢ちゃんと話したかったけど、そろそろ時間かな?」


ケイさんは、いつの間にか自分の前に置かれていた、そのウイスキーのグラスに口を付け、一気に飲み干している。



「あ、はい」


私も釣られたように、自分の前にあるリンゴジュースのグラスに口を付ける。


けど、なんだか気持ち悪くて、それが飲む事が出来ない。


ゆっくりと、そのグラスを口から離す。



「けっこう体調悪い?
ここ薄暗くて分かんなかったけど、
顔色悪いね?」


ケイさんは、覗き込むように私の顔を見ている。



「顔色悪いですか?」


「うん」


そう言われると、余計に体調が悪くなったように感じる。



「家帰らなくて大丈夫なら、朝迄仮眠室で眠りな。
案内する」


ケイさんは、私の手首を掴み立ち上がる。



「え、いや…」


と、断ろうとしたけど、急に立ったのがいけなかったのか、
ふらり、と倒れそうになる。


倒れないように、それをケイさんが支えてくれているけど。



「ん?梢、何処行くの?」


そう訊いて来るのは、完全に泥酔している、ミヤコ。



「梢ちゃんちょっと体調悪いみたいだから、
店の奥の仮眠室でちょっと休ませてあげるね」


ケイさんがそうミヤコに言うと、
うん、分かった、とミヤコは返事して、
再び、その若いホストとの二人の世界に戻って行った。