「お父さんは?
まだ寝てんの?」


「父さん、俺が帰って来た時も部屋の電気点いてたし。
今日は昼くらい迄寝るんじゃねぇか」


私と兄は、義理の父親の事を、当たり前のように"お父さん"と呼ぶ。


母とそんな義理の父が再婚したのは、
私が高校生になる直前。


元々、義理の父は母の高校の同級生らしく、昔からずっと私達の母の事が好きだったらしい。


どんないきさつで、母親と結婚する事になったのかは詳しくは知らないけど。


バツ1子持ちの母親とは違い、義理の父は初婚。


この家も、母が私達の本当の父親から慰謝料として貰った形になって住んでいたのだけど、
ローンも残っていて、名義もまだその実の父親になっていたらしく。


その義理の父親が、母親との結婚の際に、
この家を、前のその実の父親から買い取ってくれたらしい。


「ほら、家迄また変わったら、あなた達が可哀想だからって、あの人が」


母親からそう聞かされた。


義理の父親が、そう言っていたのだと。


その時はそこ迄考えなかったけど、

再婚するならあの家から出て行けとか言われてたのだろうか?


あの、クソみたいな私達の実の父親から。


今思うと、実の父親は昔から本当に嫌な父親だった。


「父さん、最近仕事大変みたいだな」


兄のその言葉に、私はそのピザトーストを齧りながら頷く。


私と兄は、その義理の父親を実の父親なんかよりもとても慕っていて。


私も兄も、喜んでその義理の父親の姓である真壁を名乗っている。


その真壁である新しい父親は、本当にとても良い人で、
あれだけグレていた兄が、夢を見付けてそれなりに現在ちゃんと働いているのは、その義理の父親のおかげ。


そんな義理の父親の仕事は、一応自営業になるのか。


仕事場は借りてあるのだけど、
けっこう自宅であるこの家でも、その仕事を持ち込んでしている。