篤さんとの事があって、1ヶ月近く経つ。


あれ以来も、会社では篤さんの姿は見掛けるけど、
言葉を交わす所か、視線すら合わない。


今日から7月か、と、朝起きて二階の自分の部屋から下のリビングに行くと。



「よぉ、梢」


ダイニングテーブルの椅子に座り、
朝食を摂っている兄、瑛太の姿があった。


「あれ、お兄ちゃん来てたんだ」


兄に会うのは、GW以来。


その時もチラッとこの家で、顔を合わせた程度だけど。



「昨日、地元の奴らとこっちで飲んでて。
終電ないから、こっち帰って来た」



て事は、兄は私が寝てからこの家に帰って来てたんだ。


全然、気付かなかった。



ダイニングテーブルの上の大きな皿には、
兄の手作りなのか大量のピザが。


ピザと言っても、ピザトーストだけど。


「ピザかぁ。朝から重いなぁ」


それを目に映すと、ちょっと胸焼けした。


私は、そのダイニングテーブルの椅子に座る。



リビングには兄しか居なくて、
母親は、洗濯でもしているのだろか。


「朝はしっかりと食え」


兄はそう言って、小さく切っているピザパンの一切れを、私の目の前の小皿に入れてくれる。