私は篤さんに、マンションの自宅迄送って貰った。


ボルボは先程の衝突で若干凹んでいたが、
特に問題はなく走った。


篤さんは自宅に戻ると、着替えるだけではなく、シャワーを浴びて再び出て行く。


それを、私は玄関先迄見送る。


「なるべく、早く戻って来るから」


そう言う篤さんの顔は、血は止まったけど、時間が経つにつれ、腫れが増しているように思う。


「私の事は気にしないで、ゆっくりと楽しんで来て。
飲むのは程々に」


ほんの少し、篤さんと離れるのが寂しいな、と感じた。


最近、仕事でもずっと一緒に居るからかもしれない。


「行って来るな」


篤さんは私を両手で引き寄せ、そのままキスをして来た。


それは一瞬触れただけで、少し音をたてて離れた。





朝、目が覚めると、隣には篤さんが眠っていた。


最近、私は篤さんのベッドで毎日眠っている。


けっこう飲んだのか、篤さんからはお酒の匂いが凄くする。


気持ち良さそうに眠る篤さんの顔に触れる。


篤さんの腫れて青くなっている左頬。


それ以上に腫れて黒い痣になっている、右の頬。


私の兄瑛太はサウスポーで、兄が殴ったのは、篤さんの右の頬。


スースーと眠る篤さんの寝顔を見ながら、
本当にこの人が愛おしいな、と思った。