LOVEDANGER~元ヤン御曹司と悪女OLの身籠り溺愛婚~




「え、じゃああれカピバラじゃないんですか?」


「そう。なんて言ったかしら?
ヌートリアだったかなぁ」


夕方の16時。


私は松嶋さんのデスクに椅子を持って行き、
その仕事を見せて貰っていた。


松嶋さんは、自分の企画で既に商品化されている商品の、
リニューアル案を練っている。


同じ女性だからか、自然と松嶋さんが私に仕事を教えてくれている。


「元々外来種みたい。
最近、日本で増えてるらしいよ」


「そうなんですね」


松嶋さんはその作業に息詰まって来たのか、
私と少し雑談をしていた。


視線はパソコンのままだけど。


大した話ではないのだが、私から振った話題。


以前、会社の近くの川でカピバラを見たと。


そうしたら、それはカピバラではなくて似た生き物なのだと、松嶋さんが教えてくれた。


あれ、カピバラじゃなかったのか…とちょっと残念だけど、いいや。


そのヌートリアとかいう生物のおかげで、
私は篤さんと結婚出来た。


あの時、その存在に気付かなければ、
篤さんがあの橋に来る前に、私は駅へと向かっていた。


そもそも、篤さんは滅多にあの橋を渡らず、違う道を使っている。


あの日、篤さんは会社帰りに本屋へ行こうと、
たまたまあの橋を渡ったらしい。