「俺、近藤とは同期なんだよ」


そう聞いて、平井さんは近藤龍馬とは同じ歳なので、同期でもおかしくないか、と思う。


「入ってすぐの時、同じ生産の部署に俺と近藤は配属されて。
かと言って、そんなに近藤と仲良くしてたわけではないんだけど。
近藤の仕事振りはよく知ってる。
あしげく、自社工場や下請けの工場とか通ってたな。
それがどんな材料で作られるのか、とか、そのコストとか興味持って聞き込んでたり。
もう休みの日とかも、返上して。
同期の飲み会の時に、いつかカプセルトイを作る仕事がしたいって熱く語ってた。
そっからすぐにベンダー事業部に配属されて、その生産部の時の経験を活かした近藤の企画したカプセルトイがヒットして、課長になったんだよ」


その平井さんの話は、私の知らない近藤龍馬の姿で。


「近藤って、努力を隠すタイプだから。
課長になる前は、毎日終電迄会社に残って、そのカプセルトイの企画を何個も練ってたらしいよ。
課長になってからも、家や休みの日はそうやって今も企画考えてるだろうし」


言われてみると、近藤龍馬とは付き合ってる期間が短かかったけど、
何度か食事に行っただけで、デートっていうデートはした事なかったな。


「俺、休みの日とかもけっこう忙しいから。
日曜日の昼間少しなら空いてるけど?」


とか、私から何か言ったわけではないのに、
そうやって牽制を受けた事もあった。


「何が言いたいかと言うと、
近藤は仕事に私情を挟むタイプではないから」


私情かぁ…。


普通に考えたら、仕事だとはいえ、
近藤龍馬は私や篤さんと関わりたくないだろうな。