朝一番に、私と篤さんはベンダー事業部を訪れた。


総務の部署もとても大きかったけど、
それ以上にここは広くて。


庶務課の時にこの部署に仕事で何度か来た事はあるので、わりと知った場所。


ここを訪れる時、付き合う前も後もその最中も、私はなるべく近藤龍馬に見付からないようにしていた。


話し掛けられたくないから。


そんな近藤龍馬のデスクは、この広い空間の真ん中辺りの、窓際。


私と篤さんがそうやってベンダー事業部を連れだって歩いている姿に、
気付いた人から仕事の手を止め凝視して来る。


その視線が痛いくらいに。


目的である近藤龍馬も、近付く私達に気付き、驚いたように二度見して来た。


生まれて初めて、そんな風に誰かに二度見されたな、と思うと同時に、
初めて二度見する人を見たな、と思う。


「レディトイプロジェクト部の川邊です。
アポなしで訪れてすみません。
近藤課長に、仕事の話でちょっと」


そう言うのは篤さんで、私はその横で頭を下げる。


元彼、近藤龍馬に。


そんな風に、元彼の元に、現夫の篤さんと私が訪れた事に。


今、ベンダー事業部全体が注目していた。