「にしても、海宝のヤロウ…」



篤さんはそう言って、スーツの胸ポケットからスマホを取り出した。


そして、それで電話を掛け出した。


「おう。未央、お前にちょっと話あんだけど」


てっきり、その海宝久志さんに電話を掛けていると思ったので、
篤さんが今電話を掛けたその相手が未央さんで、驚いた。


海宝久志さんの奥さんで、
篤さんと大学受験を戦った戦友のような未央さん。


「お前の旦那、まだ広子に未練あんじゃねぇ?」


その篤さんの言葉に、えっ、と驚いてしまう。

だって、そんな事を、未央さんに言ったらダメなんじゃあ…。


「なんかよ、俺の嫁に海宝が言ってたんだけど。
広子は料理上手であっちの方も良くて、ドMだからすげぇハマってたみてぇな事言ってたんだってよ。
未央、お前と全然違うじゃねぇか?」


多分だけど、未央さんはどちらかと言えば私と同じような系統の女性で。


広子さんとは、正反対で。


「そーいえば、村上が言ってたけど。
アイツ未央に内緒で株やFXで三千万くらいにして、隠し持ってるみたいだぞ。
んな感じで、未央に隠れてアイツ色々やってるから。
一回、しめとけ」


そう言って、篤さんはその未央さんとの電話を切っていた。



「いいの?
きっと、未央さんと海宝さん、修羅場になるんじゃあ…」


あの、未央さんの気の強い感じを、思い出した。


「因果応報だろ?」


篤さんは、そう笑っている。