「未央、お前出産の時、こっち帰って来んのか?
にしても、デカイな」


篤さんは、その女性の事を親しそうにミオと呼んでいて。


私よりも大きいそのお腹を、
篤さんは撫でるように触れている。


その、名前を呼び捨てなのもそうだけど、
そうやってお腹を触って、親しい感じ。


なんなの?


「ううん。
向こうで産む。
私が実家に帰ったら、久志が寂しがるから。
ね?」


その未央さんは、その久志と思われる人物に視線を向けた。


その人は、細身でスラッとしていて、
一瞬、人形?と思ってしまうくらいに綺麗な顔をした男性で。


なんだか、こんな人が居るんだ、とビックリしてしまった。


「だって、今も俺が家事の殆どやってるし、
こっちに帰らなくて大丈夫でしょ?
夜中とか、交代でミルクあげるくらいなら、
俺出来ると思うし。
オムツ替えも風呂に入れたりも、出来る限り俺も協力するし」


その久志さんの、旦那の鑑のような発言に、
なんだか感動を覚えてしまった。


「篤君も、久志くらい育児に協力しないと」


「は?
ありえねぇ。
俺、絶対夜中とか起きらんねぇ」


篤さんのその言葉に、なんだか失望してしまう。


だけど、篤さんはそう言いながらも、
きっと育児に協力してくれるだろう。

そう信じる!


それにしても、未央さんの篤さんの事を、篤君って呼ぶ感じ。


ちょっと、妬ける。



私は篤さんの奥さんなんだし、
こんな些細な事で妬いたらダメだと思いながら、首を振る。


その時、その久志さんが視界の端に入ったのだけど。


ビクッと体が震えてしまうくらいに、
楽しそうに話している、未央さんと篤さんを睨み付けていて。


嫉妬?


そんな私の視線に気付いたのか、
久志さんは鋭いその表情を緩めて、
ニコリ、と私に笑い掛けて来た。


その笑顔は、子供のような人懐っこい感じなのだけど、
つい先程のこの人のそんな部分を見たからか、
その笑顔が怖くて仕方ない。