「衣奈」
「っ」
顔を逸らしているせいで、律の吐息が左頬にかかって少しくすぐったい。
ううん。くすぐったいのは頬だけじゃなく、なんだか胸奥までむずがゆいような気がしてきて、
「り、律……!」
堪らず、律の名前を呼んだ。
「なに?」
こっちはこんなにも余裕がないのに、律の声はいつも通り平然としている。
それになんだかムカついてきて、仕返しと言わんばかりに大きな声で叫んでやった。
「もう、離れてってば!!」
「なんで?」
「な、」
なんでって……
「ち、近い、から!」
そんなの、それしか理由ないじゃない。
「お願いだから……っ!」
とにかく、なんでもいいから今すぐ離れてほしい。


