「衣奈」
「……」
「言って」
強い口調でそう言ったかと思うと、さらに距離を詰めてきた。
そのせいで、あの日の記憶がリアルによみがえってくる。
「衣奈」
「っ」
今の律は、あの日の律とは180度ちがう。
それなのにいつもの調子が出ないのは、律との距離が近いせいなのか、それとも律の雰囲気がちがうせいなのか。
どちらかは分からないけれど、なんだか自分が自分じゃないみたいで、どうしたらいいのか分からない。
「衣奈」
「……っ、き、」
「……」
「キスされたの!!」
これ以上近寄られたら無理!
そう思ったわたしは、半ばヤケクソ気味に律に向かって叫んだ。


