「違うよ。高崎くんは関係な──」 「じゃあ!」 「……」 「なんでそんなによそよそしーの?」 「……」 「なんかあるから無視するんでしょ」 「……」 あれだけ分かりやすく無視しといて、今さら無視してないなんて言えない。 どうしよう。なんて言い訳すれば…… と、そのとき。 救世主と叫びたくなるほどタイミングよくチャイムが鳴った。 「……資料、取りに行くから」 強めにそう言えば、一瞬の間を置いて腕が離されて。 わたしは下を向いたまま、律と視線を合わせることなくその場から歩き出した。