「……」
何となくごまかしたつもりだけど、鋭い律にはやっぱり気付かれていたらしい。
けど、バレていたとしても、理由なんて言えるわけがない。
だって、律の態度を見てたら分かるから。
律はあの日のこと、なにも覚えてないって。
だからいつも通りでいられるし、こんな風に直球で聞けるんだと思う。
覚えてたら絶対に普段通りの態度なんか出来るわけがないもん。
だって、わたしたち、今までそんな甘い関係なんて皆無の、普通幼なじみなんだから。
「……律の、気のせいじゃない?」
キスしたなんて、私からは絶対に言えない。
だから、なんとかごまかさないと────


