「り、つ、」 「……衣奈」 マスクをしていて良かったと、あらためて思った。 だってきっと、今、顔が真っ赤になっているだろうから。 そんなの、絶対に律に見られたくない。 と、そう思ったのとほぼ同時だった。 「───っ、」 グッと力を込められて引き寄せられたかと思えば、マスク越しに今まで経験したことのない感触が伝わってきて。 っ、うそ……! それが何なのかを理解するのに、時間はそんなにかからなかった。