幼なじみじゃ足りないよ。




「なんで……そんなこと言うの」

「んなの、言わなくても分かるでしょ」

「……分かんない」



分かんないよ。

最近の律、分かんないもん。

不機嫌になるばっかで、全然分かんない。




「っ、あー……」

「……しんどいの?」



熱で朦朧としているのだろう。もしかしたら頭も痛いのかもしれない。


苦しそうにこめかみを押さえる律に「大人しく寝た方がいいよ」と声をかけて起き上がろうとするけれど、やっぱり解放してくれなくて。


逆に、さらに引き寄せられる。



「っ、律……!」



さっきよりも近くなった、律の顔。

途端に、ありえないぐらい鼓動が大きくなって、上手く息が吸えなくなってしまう。




───こんなの、どう見ても幼なじみの距離じゃない。


今までの、わたしたちの距離じゃない。