❪焼き魚を食べる会、または聖典を巡る対話❫

魔女であるリュシカは宮廷のパーティーへとむかう。

少年たち、たとえばランディやアランベルと街角で出会う。

「何してるの?」
「焼き魚を食べる会です」
「焼き魚を食べる会?」
「タラン湖から冬に鱈やニシンがとれるのはご存知でしょう?
寒波が来た帝都ランディーナには、焼き魚を求める人々が溢れ出るのです。
焼き魚を食べる会では、少年が焼き魚を焼いているんですよ」
「それは知らなかったわね」リュシカは腕を組みました。
「さて、焼き魚を食べる会は古くは聖ドミノ教会が組織したものです」
聖ドミノ教会の文書を読んでいたリュシカは覚えがあった。

魚の奇跡だ!

「タラン湖に、聖ドミノの末裔がいたとはね」
「そうですね。グローバル化するにせよ、地域化するにせよ、聖典とは暗記し朗唱できる分量でなければなりません」
「その道具的な解釈の蓄積がテキスト解釈、つまり人文学なわけね」
リュシカは目を丸くしました。
思いもよらず冬に焼き魚を食べることから、人文学の話題に転じたのですから。