「帰る?どこによ!ここが私達の家じゃない!」
「まぁ!違うわよ、新しい家族と暮らすの!優しいパパと贅沢な暮らし!家だってここよりもっと大きいわ!どう?完璧じゃない!」
──狂ってる。
キャピキャピと話すお母さんは、もう私の知っているお母さんじゃない。
「やめてよ、私の家はお母さんの家じゃない!」
「そんなこと言わずに、行くわよ〜!」
うふふっ、と笑いながら、考えられないような力で止まっていた車に連れて行かれる。
栗栖さんが運転する車と同じような見た目だが、雰囲気が違う。
「早く乗りなさい!」
ドンっと背中を押され、車に乗せられる。
その瞬間、甘い香りがして意識が途絶えた。


