今宵、君と、あの場所で。


その奇妙で珍しい光景は、楽仁が偶然通りかかるまで続いた。

普段どおりのポーカーフェイスで歩いてきた楽仁は、自分の(あるじ)が珍しく慌てているのを見て、助けるか助けまいか、5分程脳内会議をしたのち、助けに入ることにした。

理由は簡単である。

主は恋愛に疎いからだ。

普段は冷静沈着、冷徹非道な主は、恋愛には無縁だった。

よって女性経験が皆無に等しい。

初恋の少女が忘れられず、他の女には見向きもしなかったせいだ。

きっと大切に抱えて連れてきたあの少女が初恋の少女なのだろう。

彼女に嫌われてしまうと、この組の未来が危ぶまれる。

楽仁は歩みを主と少女に向けた。