今宵、君と、あの場所で。


「えっ、あ、いいですっ!自分で手当できます!」

驚きすぎて呆けていたが、自分の身の危険を感じて断ろうとする。

「ケガしたの俺のせいでしょ。怪しく見えるかもだけど、下心とかまったくないから」

いやいや怪しすぎでしょ。黒いフルスモークの高級車とか。

「もういいから乗って。すぐ帰れるから」

半ば放り込まれるようにして車に乗る。

「………あなた何者なんですか?」

車の中は、広いラウンジの様になっていた。

こんな車に乗れるなんて、絶対普通の人じゃない。

「普通の大学生」

「じゃないですよね?」

「いいから。顔、見せて。手当するから」

また頬に触れられ、心臓がドキッと音をたてる。