今宵、君と、あの場所で。

二人について行くと、バイクのエンジン音が響く倉庫の周りから、倉庫の裏に着いた。

「はっ、ノコノコついてくるなんてアホだな」

「こんなやつに引っかかるなんて、本郷家の坊ちゃんとは名ばかりだ」

「え…?あなた達は…?」

見るからにおかしい。

流星さんに明らかな敵意を向けているよう。

「花嫁にろくな教育も受けさせてないんだな、本郷は。まぁいい、これだけ楽に連れてこられたからな。俺は、──」

さっきまでうるさく思っていたざわめきが、やけに遠く感じる。

「いい加減にしろ、鬼丸(おにまる)篤志(あつし)

「本郷流星…」

鬼丸、といっただろうか、そんな彼に驚きと恐れの色が浮かぶ。

「何をしていた。鬼丸家はそんな指示を出したのか?それなら見過ごせないな」

空気が冷える。

「な…そんなことっ!」

「ならお前の独断か。お前が若頭など鬼丸も落ちたものだな」

その冷酷な瞳が、この場を支配する。

「なんだと!本郷家のやつだからと調子に乗りやがって…!そこの女もろくなやつじゃない。お前も女には甘いのか」

はっ、と嘲るように笑う鬼丸。

「美玖は家に関係ない。だが、美玖を傷つけるやつは誰だろうと許さない」

まっすぐと敵を見つめるその瞳が、あまりに真剣で。

「もういい。こんな茶番に付き合っていられない」

シラケたように彼らは去っていった。