「そっか。それって、どんな人?」
「昔、小さい頃、家がまだお金持ちだった頃、別荘があったんです。夏とかよく行ってて。その別荘地にやっぱり毎年の夏に来る男の子がいて、毎日一緒に遊んでました。5歳くらいの夏かな?いつもみたいに帰る日が来て、また来年って約束したんですけど、その年に会社が倒産して、別荘も手放すことになって。……好きだったんです、その子の、笑顔とか、無邪気さが…っ」
涙が溢れてきて、止まらない。
別荘を手放すことが決まったとき、はじめに思ったのはその子のことだった。
思わず腕で目を擦る。
すると、優しく手を退けて、柔らかいものが当てられた。
「擦ったらだめだよ。優しく拭いて」
彼のハンカチだった。
「ありがと…っございます…っ」


