今宵、君と、あの場所で。

「ん?そういえば美玖どうすんの?」

空気が緩くなったところで、零が言った。

「わ、私はいいっ!てか帰らせて!」

「そうだね、もう7時だし、家まで送るよ」

「いつもありがとうございます」

そう言って、連れ立って倉庫を出た。



車に乗り込み、流星さんと向かい合って座る。

「流星さん。あの、私、流星さんの彼女っていう設定になっちゃってますけど、いいんですか?」

「ああ、いいよ」

「彼女さんとか、いないんですか?」

「許嫁ならいるけど。………美玖ちゃんが好きなんだけどね」

あとから言った言葉は、小さくてよく聞こえなかった。

許嫁が、いるんだな。

お金持ちだろうし、いてもおかしくないかも。

「美玖ちゃん。初恋の人とかいる?」

こんな質問が、流星さんの口から飛び出すとは思わなかった。

「…っ。います」

「今でもその人を、想ってる?」

悲しそうに目を細めて聞いてくる。

「…はいっ」

これだけは自信を持って言える。