彼らが見えなくなるまでそっちを見ていた彼は、彼らが見えなくなるとくるりと振り返って私を見た。

「また会ったね。大丈夫だった?結構強気で言い返すんだね、入るタイミング失っちゃったよ」

え、途中から聞いてたんだ…

「あなた、何者なんですか?」

「普通の大学生だよ」

何言っても言わなそうだ。

「ご迷惑をおかけして、すみませんでした。あの、なんで、私のこと、彼女って?」

「ああ、つい。ああでも言わないと助けられないなって思ったし」

彼は、ははっ、と軽く笑った。

私には、それが何かを誤魔化して笑っているような気がして、思わず口走っていた。

「もしよかったらなんですけど、うちでご飯食べていかれませんか?」

「いいの?けど、どうして?」

「なんか、寂しそうな目をしてるな、って思って。ご迷惑ならいいんですが」

「ううん、全然大丈夫。ありがと、お邪魔するよ。料理得意なの?」

「小さい頃から親の代わりに作ってて。あんまり親家に居ないし…」

「あ…、なんか悪いこと聞いちゃったね」

申し訳ない、と謝る彼。

…名前、知りたいなぁ…


…って、は?何考えてんの?

「何、一人で百面相してんの?」

「へっ?」

「まぁ、そんなとこが可愛いんだけど…」

彼がなにか言ったようだけど、聞き取れなかった。



「あ、そういえば、俺の名前知らないよね?俺、本郷流星」

「ほん、ごう……?」

「あー、やっぱそう来るか…。たまたま偶然、組の名前と一緒だっただけだよ。なんの関係もない。」