姉の気持ちも分かる。先輩だって辛い。
 依枝奈はそう考えるとまた涙が出てきそうだった。自分はどうしたらいいのだろうか。諦めようと思っても気持ちは消えてくれない。

「いーえな!」

「あ、みっちゃん」

 依枝奈は背中を叩かれて振り向くと友人の美波がいた。美波は高校で出来た依枝奈の友人である。

「どうした……ん?」

 美波は依枝奈の目を見つめる。依枝奈はマズイ、とすぐ目を擦った。

「泣き虫」

「……ごめん」

 苦笑いを見せると美波は依枝奈の手を掴んだ。

「うちおいで。昨日ね、お母さんが駅前のシュークリーム買ってきてくれたの」

 駅前のシュークリームといえば、有名洋菓子店の1番人気でテレビにも出ていた。1日限定200しか発売されていなくて手に入れるのは難しいと聞く。

「行く、行く!!みっちゃん、大好き!」

 美波は笑いながらため息をついた。

「じゃあ、行こっか」

 美波の家につくと可愛い部屋に通され、美波の母がシュークリームを出した。若い母でゆっくりしてってねというと部屋を出て行った。

「……依枝奈はさ、なんで高橋直哉がいいの?」

「先輩は命の恩人なの。まだ話してなかったよね」