そう言って、セリカもオウガ同様に頭を下げた。美しいカーテシーとその言葉に、静まり返っていた広場に歓声が広がった。あの日、世界中の人々を癒した聖女様が力を使い果たしてしまったと言う噂はすでに広まっていた。それをわざわざ皆の前で言う必要もないのに、悲しそうな顔をして語る優しい王妃に皆が魅かれないはずがない。
「王妃様、あの日助けて下さりありがとうございます」
「王妃様、癒しの力をありがとう」
「王妃様、万歳!!」
民衆達の優しい言葉にセリカの瞳に涙の幕が張る。
なんて温かい人々だろう。
セリカは胸の前で両手を組み息を吸い込むと、聖女の歌を歌った。
**~
命を紡ぎ空へと舞う白き羽
星の子よ生きなさい
寄り添う魂よ
よみがえれ
あなたの幸せを願い、声に乗せて歌いましょう
**~
セリカの口から紡いだ美しい歌声が風に乗って響き渡ると、キラキラと光の粒子となって降り注いだ。その美しさに民衆は両手を開き歓喜した。
「わーーーー!!!!」
セリカはその様子に目を見開いた。
いったいこれは……。
リレイニア様は聖女の力は消失させたと言っていたはずだけど……。
考え込むセリカの脳裏にリレイニアの言葉を思い出す。
ほんの少しの祝福……。
そう、それはリレイニアからの祝福だった。
ああ、リレイニア様ありがとうございます。
これから、大変なことも沢山あるだろう。それでも私はオウガと共に生きていく。
どうか見ていてください。
私は幸せになります。
セリカはオウガに寄り添い笑顔を見せた。その瞳はもう赤く染まることはなく、美しい紫水晶の色をしていた。
* fin *