広場には即席で作り上げられた処刑台が設置されていた。それは以外にしっかりとした作りとなっていて、ギシギシと変な音を立てたりしない。この国の大工は良い仕事をする。ファルロはこれから処刑されるというのにそんな事を考えていた。

 ゆっくりと処刑台の階段を上っていくと、民が見たこともないような顔でこちらを見つめていた。

 軽蔑の眼差し……。

 処刑人とはこんなにも惨めなものなのだな。

 ふと顔を上げると、そこには青い空が広がっていた。ファルロはボーッと空を眺めることが好きだった。白い雲が形を変え、ゆっくりと動いていくのを見ていると心が落ち着いた。愛する人と青い空を見ながら過ごす時間を夢見ていた。

 セリカ嬢……。

 俺は首に縄をかけられながら一人の女性を思った。



 どうか幸せに……。


 もう一度、空を眺めていると、歌声が聞こえてきた。優しく透き通る声はセリカのものだ。

 ああ、最後にあの人の声を聞きながら死ねるなんて……。



 死刑執行の鐘が鳴る。



 ファルロはもう一度願う。

 セリカ嬢……どうか幸せに……。




 俺はあなたを……。





 優しく微笑む元王太子。今まさに処刑される人間とは思えない表情をしているファルロの姿に民衆は息を呑んだのだった。