負傷した騎士の手当をするため忙しなく働くセリカの元へ、ファルロがやって来たのは三日後のことだった。

 セリカが洗濯した包帯を干していると、突然後ろから誰かに抱きしめられた。

 えっ……何?

 目を丸くして驚くセリカの瞳に映ったのはファルロの姿。

「セリカ嬢これはどういうことかな?聖女の力は使った様子がないが?」

「殿下……重傷者は聖女の力で治しています」

「そうか……」

 そう言ったファルロの手が少し震えていた。

 震えている?

 寒いわけではないわよね?こんなにぽかぽかとした陽気の日に……。

「体は大丈夫か?」

 私の体を心配しているの?

 あれだけ聖女の力を使えと言っておいて?

 ファルロに後ろから抱きしめられた状態でセリカは固まっていた。ファルロが何を考えているのか全く分からない。


 固まり続けるセリカの耳元でファルロが囁く。

「よかった」

 何が……?

 何が良かったというのか?

 そこでドンッという空砲が響き渡った。