*

 セリカはティーカップを片手に天を仰いでいた。

 何の考えも浮かばないまま時間だけが過ぎていく中、慌てた様子のメリルがノックもせずに部屋の中に飛び込んできた。

「セリカ様、大変です。フィールド辺境伯領にアリエント王国の騎士が進軍してきました。戦争が始まるようです」

 とうとうこの日がやって来てしまった。そろそろなのではないかと皆が思っていたことだろう。この戦い、避けられるものなら避けたかった。

 この戦いで私は聖女の力を使うだろう。この力は命を削る。

 ……それでも私はこの力を使う。

 自分の命を削ってでも守りたい人がいるから。

 オウガ……あなたは私が守るります。

 この命に代えてもあなたを守ってみせる。

 セリカは胸に手を当てると祈るように目を瞑った。