そんなことは分かっていた。もっと早くこの世界から消えてしまった方が良かったということも。しかしそれは出来なかった。絶望の淵に立たされても、突き落とされても、自らの命を絶つ事が出来なかった。それで良かったと最近は思っている。

 オウガに出会えたから……。

 そんな私がオウガを苦しめているの?

 どうしたらいい?

 二人が幸せになるにはどうしたら良いの?

 分からない。

 何も分からない。

 目の前が、暗闇に閉ざされる。暗闇に一筋の光が差したと思っていたのに……光など存在していなかったかの様に、今は全てが黒く塗りつぶされていた。


 助けて……。

 この手を握り返して、この世界から救い出して。

 

 意識が暗闇の中へ引きずられそうになっていたその時、オウガの優しく大きな手がセリカの手を握りしめた。


「俺はあなたを一人にしないと誓う。あなたを守り幸せにする」


 幸せに……。
 
 二人で幸せになる。

 たったそれだけ、それだけなのに。

 それが今のセリカ達には難しい。

 二人で幸せに暮らしたい。

 それだけなのに……。

 セリカの頬に一筋の涙だこぼれ落ちた。ダイヤの様に輝くその涙をオウガが指を使って優しく払うが、溢れ出した涙は止まらない。ポロポロとこぼれ落ちていく涙の粒を止めるべく、オウガはセリカの瞼にキスを落した。