電話越しの芹花の必死の様子に、凰雅は思わず吹き出してしまった。

「あっ、すみません。でも私……『セリカ』の記憶も断片的で、私の思い込みだったりしないのかなって……私、セリカについてかなり調べていたので」

 思い込み?

 そんなことあるわけがない。こんなにも魂が呼びかけ合っているのに。

「芹花は俺と一緒にいることが不安?」

「ううん。そんなことない。えっと……」

「他にも不安なことがあるの?」

「…………」

 急に黙ってしまった芹花にもう一度声をかけようとしたとき、ボソリと芹花の声が聞こえてきた。

「雑誌に……綺麗なお姉さんと映ってた」

 綺麗なお姉さん?

「すごく仕事の出来そうな綺麗なお姉さん。凰雅さんとすごくお似合いで……」

「…………」

 今度は凰雅が言葉を失い黙り込んだ。

 これは……嫉妬か?

 その瞬間、ブワリと体が熱くなり右手で口を覆うとワナワナと体が震えだした。

 なんだこれは……嬉しすぎる。

 何も言わない凰雅に芹花の不安は募るばかりだったが、ここでようやく凰雅が口を開いた。

「芹花、好きだよ」

 たった一言。

 それは今、芹花が一番ほしい言葉。

「凰雅さん……私も……大好きです」

 くそっ。

 ああ、やばいな……待ち続けた愛しい人。あと少しだけ、待つことなんて簡単なことだと思っていた。

 それなのに……。

 手を伸ばせば届く場所にいる愛しい人を、今すぐ欲しいと思ってしまう。

「芹花、窓を開けられる?」

「窓ですか?」

 窓を開けた芹花がよほど驚いたのか大きな声を上げた。

「凰雅さん!!」

 外に向かって叫ぶ芹花に凰雅は戸惑いながら、人差し指を口の前にもっていった。離れていてもシーっと凰雅の声が聞こえてきそうだ。