歌い終わり、そっと目を開けると目の前に、息を切らした男性が立っていた。よほど急いで走って来たのだろう、こめかみから頬にかけて汗を流していて、それを手の甲で無造作に拭き取っている。芹花はそれを放心したように眺めていた。
この人……。
ボーッとする芹花に、目の前の男性が手を伸ばしてきた。
「やっと、やっと見つけた……俺のセリカ」
そう言って男性が芹花の手を取ると自分の腕の中に閉じ込めた。その手は震えていて芹花の胸がキュンと高鳴った。
知らない男性に抱きしめられているというのに、何の嫌悪感も感じない。それよりも愛しい、愛してる、そんな言葉がしっくりするように心臓が高鳴っていく。
私は知っている。
この人のことを、ずっと……ずっと待っていた。
あなたに会える日を……。
「オウガ……」
芹花は自然とその名を呼び、その声に男性は破顔した。その顔は金の髪に透き通るような青い瞳……文献に残された『オウガ』そのものだった。
「俺の名は隅田凰雅(すだおうが)今の君の名前は?」
「私は芦屋芹花(あしやせりか)」
見つめ合う二人の頭上で魂が共鳴し合い、過去の二人がこうして再び出会ったことを喜び合っている。魂となってしまった前世のセリカとオウガが抱きしめ合っていた。
聖女の歌にもあった。
寄り添う魂よ
よみがえれと……。
またこの人に出会えた奇跡。
今世では幸せになりたい。この人と共に……。
涙を流す芹花の唇に凰雅は唇を重ねた。