芹花は自分と同じ名前のこの聖女がとても気になり、いろいろと一人で調べていた。しかし残されている文献は少なく自分が知りたいことはあまり分からない。

 どの資料を見ても聖女は傲慢でワガママ、王族にも臆することのない女性だったとか……しかし、オウガ・ディスタールの残した護衛記録には初めこそ同じような事が記されていたが、他の資料とは違う内容が沢山書かれていた。

 今ではその文献が聖女の本当の姿だったのだと、悲劇の演劇となっていたりする。死が二人を分かつとも愛し続けるという2人の姿は女性たちに大人気で、何度もリメイクされては公演されている。


 オウガ・ディスタール様か……。

 芹花はその名前を口にした。

 するとドクンッと心臓が早鐘を打ち動き出す。

 芹花は逢ったこともない、遠い昔に生きていた騎士に恋をしていた。聖女セリカを守り続けた英雄オウガ。

 私はあなたに会いたい。

 あなたはどんな風に笑いますか?

 あなたはどんな声をしていますか?

 会ったこともない過去の人間に恋をし、愛しいと思っている。自分でもおかしいと思う。それでもこの思いは止められない。



 
 芹花は公園のベンチに座り、瞳を閉じると両手を組み歌っていた。文献に残されていた聖女の歌を……。



 **~

 命を紡ぎ空へと舞う白き羽

 星の子よ生きなさい

 寄り添う魂よ

 よみがえれ

 あなたの幸せを願い、声に載せて歌いましょう


 **~