ファルロ殿下なぜここに?
「なぜここに私がいるのか分からないという顔をしているね?オウガ、君がさっさと聖女に力を使わせないからいけないんだよ。こっちに聖女を連れてきて」
ファルロが後ろに控えていた騎士に声をかけると、セリカが引きずられるようにして連れてこられていた。
「いやっ!!離しなさい!!」
「抵抗はしない方が良いぞ。見てみるがいい、オウガの姿を……」
騎士に支えられ何とか立っているオウガと目が合うと、セリカの瞳から涙があふれ出した。
「オウガ!!怪我をしているの?早く手当を!!んぐっ……」
そう叫んだセリカの口に布を噛ませ、それ以上しゃべることが出来ないようにされてしまった。その様子を見ながらファルロが楽しそうに口を開く。
「おっと、いけませんね。すぐに癒やしの力は使わないで下さい。セリカ嬢は今ここで誓いなさい。これからは全ての騎士に聖女の力を使うことを……。出来ない場合はオウガを……」
「んんーー!!んっ……ぐっーー!!」
叫び続けるセリカにファルロが微笑む。そんなファルロに向かってオウガが頭を下げた。
「ファルロ殿下、それではセリカの体がもちません。今まで通り重傷者のみでお願いします」
「そんな事をしていたらいつまで経ってもこの戦が終わらないだろう。ねえセリカ嬢あなたはどうしたらその力を使ってくれるのかな?」
叫び続けるセリカの瞳にファルロの顔が映し出された。それはあの日、両親が殺された日に見たファルロの顔だった。
笑顔を歪ませた顔。
嫌だ、何をする気なの?やめて……やめて……やめて。
「セリカ嬢あなたが全て悪いのです。学習能力のない、あなたが……素直に聖女の力を使ってくれていればこんなことにはならなかった」
そう言いながらオウガの前に立つと剣の鞘を握り絞め、オウガの胸に突き立てた。
いっ……いやーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!